電子帳簿保存法を理解するために(令和4年10月号)
全体像からみていきましょう。
電子帳簿保存法を簡単にいうと、電子での書類等のやりとりは、電子で保存する(強制適用)。
帳簿も紙保存からデータ保存へ。
領収書や請求書は、スキャンして電子で保存しましょう。それを行うためのルールがこの法律です。
「電子帳簿保存法」は大きく3つに分かれてるため、今どの部分の話をしているかを認識しなければなりません。
1.電子帳簿・電子書類保存(任意)法律の第4条1項、2項に該当
2.スキャナ保存(任意)法律の第4条3項に該当
3.電子取引(強制:現在は経過措置 令和6年1月1日から強制)法律の第7条に該当
法律では、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
今回取り上げるテーマは、「電子帳簿・電子書類保存」です。
税理士法人マークスでは、TKCのFXシリーズを導入しているお客様には、積極的に電子帳簿を勧めています。
CD1枚の中に1年間の仕訳帳や帳簿が見ることが出来るように保存しています。(FX2,まいスターの場合)
クラウドシステムでは、CD保存そのものが無くなり、TKCのサーバー保管となります。
電子帳簿保存法の歴史と事務所の取組
1998年 | 平成10年 | 7月 | 電子帳簿保存法施行(当初は、1の電子帳簿・電子書類保存のみの法律でした。) |
11月 | TKC FX2 「電子帳簿対応版」レンタル開始 | ||
1999年 | 平成11年 | 1月 | TKC SX2 「電子帳簿対応版」レンタル開始
この当時承認されたソフトは、ロータス社の「ロータス1.2.3経理」とFX2でした。 |
2004年 | 平成16年 | 6月 | 電子申告制度が全国で開始 |
2005年 | 平成17年 | 4月 | 電子帳簿保存法改正の対応(スキャナ保存制度の追加) |
2005年 | 平成17年 | 4月 | e-文書法施行(平成16年12月公布) |
2007年 | 平成19年 | 電子申告を事務所で本格的に勧めていった年です。 | |
2010年 | 平成22年 | 11月 | 税理士法人マークスが本格的に電子帳簿に舵を切った年
施行から11年ほど経っていました。(9月 税理士法人マークス創設) |
2015年 | 平成27年 | 9月 | スキャナ保存の要件緩和(法律施行規則:省令)実施は平成28年1月 |
2016年 | 平成27年 | 9月 | スマホ撮影保存の導入 (法律施行規則:省令)実施は平成29年1月 |
2021年 | 令和3年 | 3月 | 令和3年度税制改正による電子帳簿保存法の大幅な改正 事前承認制度廃止 |
3月 | 電子取引の電磁的記録の内容の書面出力の保存の廃止(令和4年1月1日~) | ||
12月 | ※12月24 日の税制改正の大綱(P76)で、電子保存の義務化が2年間の宥恕を公表 (税制改正の大綱とは、閣議決定されたものです) |
※
令和5年度税制改正大綱 (自由民主党、公明党)更新済み
令和4年度の税制改正の大綱(閣議決定)
令和4年度の税制改正の大綱からの抜き出し
(8)電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置の整備
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについてやむを得ない事情があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする経過措置を講ずる。(注1)上記の改正は、令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報について適用する。
(注2)上記の電子取引の取引情報に係る電磁的記録の出力書面等を保存している場合における当該電磁的記録の保存に関する上記の措置の適用については、当該電磁的記録の保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意し、引き続き保存義務者から納税地等の所轄税務署長への手続を要せずその出
力書面等による保存を可能とするよう、運用上、適切に配慮することとする。
電子帳簿を推進するまで12年かかったこと
この制度が始まったのが、平成10年。税理士法人マークスが本格的に電子帳簿に動き始めたのが平成22年です。
本格的に動き始めまで12年の歳月がかかりました。(弥生会計をはじめ他のソフトに関しては電子帳簿を行っていません。)
仕訳を修正したときに、仕訳修正の履歴が残るシステムが関与先に受け入れられていませんでした。
また事務所内でも、変化に対応する心構えが出来ていませんでした。(削除した仕訳が残ってしまうことの抵抗感。)
帳簿を紙で保管することに安心感があったこと。(紙の方がみやすい。)
税務署に承認申請書を提出しなければならなかったこと。(めんどくさい。)
電子帳簿保存法の制度そのものの理解が出来ていなかったこと。(勉強不足・知識不足からくるもの。)
制度が任意のため、無理をしてまでやろうという思いもなく、推進していくリーダーがいなかったから。(強制力がない。)
TKCがある程度のひな形を作成してくれていたので、なんとか推進することが出来ました。
電子帳簿をお勧めする理由は
帳簿を電子データで保存する場合には、総勘定元帳を紙で出力することが無くなります。
お客さんに、紙の保存はかさばるのでどうにかしてほしいという要望が本当に多いです。
帳簿書類等は7年間の保存(欠損金がある場合には9年または10年と必要となってきます。)
そのため、保存場所を心配する必要がありません。
CD1枚で済みます。料金も仕訳数にかかわらず一定です。
補助コードや取引先別管理を増やしても問題ありません。(管理できるかという別問題は発生しますが)
(クラウド会計の場合、クラウド上で保存のためCDは発行されません。)
電子帳簿保存法とe-文書法(電子文書法)との違い
電子帳簿保存法は、財務省・国税庁管轄で1998年にでき、国税関係帳簿・書類の電子帳簿保存のみでした。
そして、2005年(平成17年)にスキャナ保存法が出来ました。(保存の仕方は厳しかったです。)
そのうえで、税務以外の保存もしようという方向性が生まれました。それがe-文書法です。
e-文書法は2005年(平成17年)に施行され、国税関係書類だけでなく、会社の定款や株主総会会議議事録、契約書、建築図面、診察記録(カルテ)などの書類を電子で保存する法律です。
民間に書面での文章保存義務が課されている場合、原則としてすべて電子保存することを容認しています。
e-文書法は、広い範囲となっています。国税関係書類も含まれています。ただ、国税関係書類は、電子帳簿保存法の第6条でe-文書法の適用を受けないと書かれています。
法律や予算案が決まるまで(国会の仕事)
この電子帳簿保存法は、正式名称、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存法等の特例に関する法律」といいます。
法律は、国会で決めます。中学の頃みなさん公民で勉強したかと思います。
同時に三権分立も習ったと思いますが、法律や予算を決めるところが国会の仕事です。執行するところが内閣です。
国会の会期
国会議事堂に国会議員が集まり法律や予算を決めるのが、通常国会です。
臨時的に行うのが、臨時会です。補正予算や緊急の法律を決めるときに開きます。
通常国会 | 令和4年は、1月17日から6月15日までの150日です。 会期は150日と決まっています。 1回会期を延長することが可能です。 |
臨時会 | 令和4年は、8月3日~8月5日に開催されました。 |
特別会 | 衆議院の解散 による 衆議院議員総選挙後30日以内に 召集 しなければならない 国会 |
直近の衆議院の解散は、2021年10月19日公示、10月31日投開票でした。
衆議院の任期は4年です。(戦後の資料によると1回だけ任期満了があっただけで、あとは解散総選挙でした。)
公職選挙法で任期は衆議院議員の任期は総選挙の期日から起算する。(解散の場合)
ここで問題になったのが10月31日も10月分に含まれることから交通費が支給された問題がありました。
衆議院のホームページでは国会中継の過去の分を見ることが出来ます。
また男性議員も女性議員も○○君と呼びます。(国会議員の名簿に書いてあります。)
日本は、間接民主主義です。国民が国会議員を選挙で選んで、国のことを決めています。
下記の言葉にもあるようにどのように国が回っているのかをなぜという疑問を持ちながら考えていきたいものです。
税制改正の場合(令和4年の場合)
会計事務所なので毎年、税制改正の方に注目しています。
各府省庁から税制改正要望を財務省に提出 | 令和3年8月頃 |
令和4年度税制改正大綱 自民党、公明党案 | 令和3年12月10日 |
令和4年度税制改正の大綱 閣議決定 | 令和3年12月24日 |
国会に提出し、審議を行う | 通常国会で1月から3月 |
税制改正成立 | 令和4年3月22日成立 |
ここで大きな流れが決まり、詳細については内閣府、財務省が法律を作成していきます。
参考令和6年度税制改正の場合
令和6年度税制改正大綱 自民党、公明党案 令和5年12月14日発表
令和6年度税制改正の大綱 閣議決定 令和5年12月
国家予算 (令和4年予算の場合)
各府省庁が概算要求書を財務省に提出 | |
財務省が予算編成 | 令和3年9月頃 |
内閣で予算案が閣議決定 | 令和3年12月24日 |
国会に提出し、審議を行う | 通常国会で1月から3月 |
予算の成立 | 令和4年3月22日成立 |
電子帳簿保存法の条文体系
正式名称 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存等の特例に関する法律
法律 国会で決定(立法権) 1条~8条 A4サイズで4枚程になります。
第1条 | 趣旨 | 国税関係帳簿書類の保存に係る負担を減らすために |
第2条 | 定義 | 6つの用語の解説 |
第3条 | 他の国税に関する法律との関係 | |
第4条 | ||
1項 | 国税関係帳簿の電磁的記録による保存等 | 1の電子帳簿保存に関係 |
2項 | 国税関係書類の電磁的記録による保存等 | 1の電子書類保存に関係 |
3項 | 国税会計書類(決算関係書類以外)に係る電磁的記録による保存等 | 2のスキャナ保存に関係 |
第5条 | 国税関係帳簿書類の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存等 | 1の電子帳簿保存に関係 |
第6条 | 通称「e-文書法」の適用除外 | 除外規定 |
第7条 | 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存 | 3の電子取引に関係 |
第8条 | 他の国税に関する法律の規定の適用 |
補足説明
第4条3項では、棚卸表、貸借対照表、損益計算書、その他決算に関する法律に関する書類以外となっています。
第6条のe-文書法とは、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の2つから成り立っています。
政令 閣議で決定(内閣には行政権があります) 1条~6条 A4サイズで4枚程 法律施行令
法律の第8条第4項から第6項までの規定について述べています。
省令 財務省が決定 1条~5条 A4サイズで10枚程 法律施行規則
法律の第4条の国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等
法律の第5条の国税関係書類の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存等
法律の第7条の電子取引情報に係る電磁的記録の保存
通達 (所轄の諸機関及び職員に対しての指示をまとめています。) A4サイズで29枚 取扱通達
Q&A 一問一答 3つのカテゴリーの合計数で 185問 A4サイズで127枚
用語の解説
「電磁的記録」ハードディスク、コンパクトディスク(CD)、DVD,磁気テープ、クラウド上、サーバー、USBメモリー等です。
上記の媒体に電子計算機出力マイクロフィルムを含めて、電磁的記録等といいます。
マークスがお渡しする電子帳簿CDでは、仕訳帳、総勘定元帳、売掛金元帳、買掛金元帳、消費税取引一覧
訂正・削除履歴と決算書類が入っています。(電子帳簿閲覧システムをインストールして見ることが出来ます。)
今月の言葉 漫画 ドラゴン桜より
たとえば税金…年金、医療保険、給与システム…みんな頭の良い奴がわざと分かりにくくして、ロクに調べもしない頭の悪い奴から多く取ろうという仕組みにしている。 By 桜木先生
情報は、いろんなところに転がっています。「なぜそうなのか。」を理解して行動していきましょう。
(システム推進担当者:望月)
補足情報