消費税の請求書方式が変わります 2021年5月号の記事から
令和3年4月1日から消費税の総額表示の完全義務化がはじまりました。
値札や飲食店のメニューなど直接消費者に表示するものについては、消費税を含めた総額で表示しなければいけないというものです。
対応に追われた事業者様も多かったと思います。
消費税は近年さまざまな改正が行われていますが、令和1年10月1日からの標準税率10%への変更と、食料品などへの軽減税率導入は皆さまの記憶にも新しいのではないでしょうか?
この税率変更に伴い今後も大きな変更が予定されています。
それが「適格請求書(インボイス)等保存方式」の導入です。これは適用税率や登録番号が記載された「適格請求書」を保存しなければならないという制度になります。
取引のなかの適用税率や消費税額を明らかにし、事業者が正確な計算を行うことを目的としています。
この制度の注意点は、「適格請求書発行事業者」として国税庁へ登録した事業者しか「適格請求書」を発行できない点です。
そして、この国税庁への登録は消費税の課税事業者しか行えません。つまり免税事業者として消費税を納税していない事業者は適格請求書を発行できないことになります。
(⇒消費税は、消費者が負担する税金です。消費者は物やサービスを購入するときに、いったん消費税を事業者に預けます。この預かった消費税を国に納付する義務がある事業者を「課税事業者」、納付する義務がない事業者を「免税事業者」といい、2年前の売上高を基準にして判定されます。免税事業者であっても申請することで課税事業者になることが可能です。)
事業者が納める消費税は、売上などの収入に課せられた消費税額から仕入などの経費に課せられた消費税額を控除した後の金額が納税額となります。
この控除することを「仕入税額控除」といいます。
今後はこの適格請求書の保存がないと仕入額控除ができなくなります。つまり、仕入税額控除を行うためには、前述の登録を行っている事業者から仕入れを行う必要があることになります。
課税事業者からすると、免税事業者へ支払った消費税については仕入税額控除を受けることができなくなり、その分納税額が大きくなってしまいます。この結果、免税事業者は取引先から課税事業者になって適格請求書を発行することを求められたり、取引自体を敬遠されてしまう恐れがあります。
この適格請求書制度は令和5年10月1日から始まります。
制度開始から登録事業者になるためには令和5年3月31日までに申請書を提出する必要があります。
(登録自体は令和3年10月1日から登録出来るようになりました。) (令和5年の税制改正で9月まで延長されそうです。)
現在、免税事業者である事業者様にとっては、課税事業者になるかどうかの検討が必要になります。課税事業者になった場合には、消費税の納税が発生することに加えて、請求書作成に伴う事務作業の増加や、システムの見直しといった点も考慮する必要があります。
制度開始まではまだ時間はありますが、早めの準備が必要になります。課税事業者への変更を検討される方はご注意ください。
西野 信宏
税務署からの資料 適格請求書発行事業者公表サイト
令和4年から令和5年にかけて、考えなければならない問題となってきます。
(追記:令和5年1月になり、税理士法人マークスでも本格的に、年一回の個人の事業者に案内しています。)
令和4年11月号のニュースに記載した内容です。
税込表示について
令和3年4月から消費税の表示方法は税込表示が基本です。
インボイス制度適用まで、残り1年を切りました。今回は、消費税の表示の再確認です。
時代によって変化しているため、税抜表示がOK。併用がOKとなっていた時代がありました。
時限立法である「消費税転嫁対策特別措置法」で価格表示の期限が2021年(令和3年)3月31日まで「税抜表示」や「税込表示」がOKです。
2021年4月1日以降は税込表示のみとなります。
消費者に対する表示 | ||
期間 | 内容 | 消費税率 |
2003年(平成15年) | 規定なし | 5% |
2004年(平成16年)4月1日 | 税込表示 | 5% |
↓ | 税込表示 | 5% |
2013年(平成25年)9月30日 | 税込表示 | 5% |
2013年(平成25年)10月1日 | 税込・税抜 OK | 5% |
2014年(平成26年)4月1日 | 税込・税抜 OK | 8% |
↓ | 税込・税抜 OK | 8% |
2019年(令和元年)10月1日 | 税込・税抜 OK | 10%と軽減8% |
↓ | 税込・税抜 OK | 10%と軽減8% |
2021年(令和3年)3月31日 | 税込・税抜 OK | 10%と軽減8% |
2021年(令和3年)4月1日 | 税込表示 | 10%と軽減8% |
↓ | 税込表示 | 10%と軽減8% |
どちらの表示でもOKの時期は、消費税の税率が段階的に変わるためラベル等を変更するのに手間がかかるという理由でした。
(消費税の税率は何度か延長しながらきました。)
2015年10月(1回目の税率変更延期) 2017年4月(2回目の税率変更延期)そして2019年10月税率変更
8年間、税抜き、税込みの明示がOKだったため、昔作ったホームページの価格が税抜きで残っている可能性があります。
一度作成したものは、そのままスルーしてしまう傾向があります。一度確認をしてみてください。
総額表示の例(標準税率10パーセントが適用されるものとして記載しています。)。
・11,000円
・11,000円(税込)
・11,000円(税抜価格10,000円)
・11,000円(うち消費税額等1,000円)
・11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)
・11,000円(税抜価格10,000円、消費税率10%)
・10,000円(税込価格11,000円)
総額表示の義務付けは、不特定かつ多数の者に対する(一般的には消費者取引における)値札や広告などにおいて、あらかじめ価格を表示する場合を対象としていますので、見積書、契約書、請求書等は総額表示義務の対象にはなりません。
総額表示の義務付けは、『不特定かつ多数の者に対する(一般的には消費者取引における)値札や広告などにおいて、あらかじめ価格を表示する場合』が対象となりますので、一般的な事業者間取引における価格表示は、総額表示義務の対象にはなりません。
消費税法 (価格の表示) 第 63 条
事業者は、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う場合において、あらかじめ課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の価格を 表示するときは、当該資産又は役務に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示しなければならない。(分かりやすくするために、かっこ書きの内容を削除しています。)